1.バランスシャフトとは?その特徴を解説
バランスシャフトとは、レシプロエンジンなどで使用される軸形状の部品です。一般的に、レシプロエンジンにおけるピストン往復運動やクランクシャフトの回転は振動を発生させますが、バランスシャフトはこの振動を抑制する(相殺する)働きを持っています。この働きにより、エンジンや機械が駆動する際の振動が軽減されることで、自動車などに乗車する人の快適性の向上や、振動によりエンジンの部品が外れる・摩耗するといったトラブルの抑制につながります。
2.バランスシャフトの加工におけるポイント
当社が過去に手掛けてきたバランスシャフトのイメージとしては下記の写真のようなパーツの加工実績があります。特徴としては、製品の形状が、外周径方向に対して一定ではなく、段付きもしくは、一部欠けているような形状を持つことです。
これらバランスシャフトの加工においては、いくつか重要な点があります。具体的には、以下の2点がポイントとして挙げられます。
- 寸法精度の確保:バランスシャフトは回転機構における振動を抑制するための機能を持ち、エンジンの駆動にあわせ回転もするため、軸中心に対する細かな精度管理が必要です。
- 断続切削における加工条件管理:バランスシャフトは写真にある通り、外形形状が一定なストレートなシャフトではなく段付き等の形状を持ちます。旋盤での加工を行う場合、断続切削と呼ばれる加工を行うことになり、ビビリによる寸法精度・公差の点で不具合が発生しやすく、加工条件の管理や、刃具などの選定も重要です。
詳細は加工サービスの中でもご紹介をいたしますが、バランスシャフトは一般的な軸ものの製品と比較して、形状が特殊であるため、加工における寸法精度管理に加え、加工条件のセッティング・工程設計にノウハウが求められる難しい加工だとご理解ください。
3.当社が手掛けるバランスシャフトの加工スペック
(材質・加工の種類・精度)
対応可能なバランスシャフト
- サイズ:Φ=10mm ~ 100mm、L寸=100mm ~ 300mm
- 材質:炭素鋼(S43C,S45C等)、クロムモリブデン鋼(SCM等)、ステンレス、他材質にも対応可
- 加工精度:切削加工 0.01mm~、研削加工 0.008mm~
対応加工な加工内容
- 旋盤・マシニング・研削
- 高周波焼入・歯切・スプライン転造・ねじ転造・セレーション転造等
4.バランスシャフト加工事例
1.S40C製バランスシャフト(中間加工品)
こちらは、自動車エンジン用のバランスシャフトになります。
本製品は、旋盤で外径部に断続切削加工を施しております。一般に旋盤加工は連続切削で行われますが、断続切削の場合は刃物を断続的に部材に押し当てるためチッピング(刃物欠け)やビビリが起こりやすく、安定した加工精度を保つ為には難度が高くなります。当社では工具の刃持ち延長と寸法精度確保の両立を図るノウハウがございます。
2.バランスシャフト(中間加工品)①
こちらは、自動車エンジン用のバランスシャフトになります。
サイズはL70×φ12×φ15で、材質はSV40Cとなります。本製品は、旋盤で外径部に断続切削加工を施しております。上記1の製品と同様に断続切削のノウハウを駆使して、チッピングやビビリを防ぎ、工具の刃持ち延長と寸法精度確保を実現しています。
3.バランスシャフト(中間加工品)②
こちらは、自動車エンジン用のバランスシャフトになります。
本製品は、お客様より軸部にφ3の小径穴をを開ける指示があったため、旋盤による断続切削後にマシニングセンタによる穴開け加工を施しております。上記1の製品と同様に断続切削のノウハウを駆使して、チッピングやビビリを防ぎ、工具の刃持ち延長と寸法精度確保を実現しています。